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2024年12月10日号 (第525)

年末調整が難しい!

 みなさん、こんにちは。来年度の税制改正に基礎控除の引上げが盛り込まれそうです。一方で、不足する財源がニュースになっているので、単純に控除額を増やして終わりではなく、所得額に応じた調整など、複雑な制度になるかもしれません。

 それはさておき、今年の年末調整が始まっていますが、説明を読んでもわからないという質問が何件か来ています。定額減税が主な原因なのですが、注意点をご紹介していきます。

源泉徴収簿で定額減税を記載する欄がない

 今年の年末調整で混乱の原因となっているのは、国税庁が公表している「令和6年分源泉徴収簿」に定額減税の計算をする場所がないという点です。

 年末調整の説明を読むと、国税庁が公表している「年末調整計算シート」をダウンロードするか、「令和7年分の源泉徴収簿」の“裏面”の令和6年分年末調整計算表を利用してくださいとのことです。例年は源泉徴収簿の右側部分を使って年末調整を行うのですが、翌年分の令和7年分の裏面というのは想定外ですし、年末調整の計算欄に記載する場所がなく、欄外で控除額を記載しないと計算が続かない仕組みとなっています。

 今年だけの特別な措置とはいえ、欄外の記載、あるいは別の用紙を利用するのは、例年、年末調整を行っている人にとっては想定外と言えるでしょう。

 なお、国税庁の年末調整計算シートは、下記からダウンロードできます。

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/nencho_keisan/index.htm

源泉徴収票(給与支払報告書)の記載にも注意

 定額減税により税額が変わってくるだけではなく、源泉徴収票あるいは給与支払報告書へ①源泉徴収時所得税減税控除済額、②控除外額、③非控除対象配偶者減税有などの記載を行う必要があります。

 上記の①の源泉徴収時所得税減税控除済額については、特別減税で控除した税額を記載します。②の控除外額は、計算した所得税額が定額減税の上限に達せず控除しきれなかった金額を記載します。③の非控除対象配偶者減税有の部分は、合計所得金額が1,000万円超で、配偶者控除は適用できないものの、配偶者の定額減税を受けている場合に記載します。

 定額減税が控除しきれないケースでは、給付金を受け取れる仕組みになっています。上記の記載がないことで直ちに不利になるとは思いませんが、単発の処理のため、各自治体がどのような仕組みで確認するか不明ですし、ミスを防ぐ意味でも記載漏れがないように気をつけましょう。

用紙の複雑さも課題

 年末調整用の用紙ですが、文字が小さすぎて説明が読めないとのクレームをよく耳にします。そして、収入金額と所得金額を勘違いして記載しているケースが非常に多いです。

 ちなみに、用紙の名前は「令和6年分給与所得者の基礎控除申告書“兼”給与所得者の配偶者控除等申告書“兼”年末調整に係る定額減税のための申告書“兼”所得金額調整控除申告書」です。用紙の枚数を抑えたい気持ちはわかりますが、制度が複雑になりすぎている状態なので、一般の人が正しく理解して記載するのは困難かもしれません。

 

 来年の税制改正で103万円の壁をなくすのなら、全体の制度を簡素化するような改正を一緒に行ってほしいと感じます。特にサラリーマンの場合、給与収入と所得金額が異なる部分が混乱の発端ですので、年末調整をするのなら収入額のみの記載で完結する仕組みの方が、一般の人には馴染むのではないかと考えてしまいます。

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